製作中の映画について

●この映画が物語る世界

「震災後のコミュニティ活動の記録とともに、人とまちの記憶をつむぐ」

石巻市門脇町、南浜町、雲雀野町は地震と津波で壊滅的な被害を受けました。家屋の大破流失をまぬがれたのは3町1772戸のうち、日和山の山裾に建つ23戸のみ。23戸（世帯）60人の住民（保育園児から後期高齢者まで）は、被災直後から寄り合って生活をはじめ、その共同体を「まねきコミュニティ」と名付けました。それから5年半以上が過ぎても住民構成に大きな変化はありませんが、土地区画整理事業が進み宅地整備が終了し、新居や復興公営住宅への入居も始まりました。2017年春には世帯と人口が増え、新しい地域のかたちが見えてきます。「まねきコミュニティ」から「新門脇コミュニティ」へ。それはどのようなプロセスで形成されていくのか。そして、震災前のこの地域にはどんな暮しがあったのか。本作品は、震災後のコミュニティ活動の記録であるとともに、旧北上川河口部に広がるまちと人の記憶（歴史）をたどる物語でもあります。

●監督メッセージ

「〈原野〉から〈まだ見ぬまち〉へ　石巻の被災直後から6年間を描く」

青池憲司

いま取り組んでいる被災地石巻に関する新作映画の撮影は、2014年3月11日に始めました。門脇小学校とその校区を舞台にした「門小映画二部作」（『3月11日を生きて』『津波のあとの時間割』）の完成後もたびたび石巻を訪ね、撮影中に親しくしていた人たちと懇談し、折々の話やまわりの情況を見聞きするうちに、わたしのなかである思いが芽生えてきました。

被災地は、震災直後の荒ぶる環境はすこしずつ穏やかになっていきましたが、わたしにはそれが凪のように見えました。激動はないが平静に復したわけでもない。最悪の日日は過ぎたとはいえ、災害がもたらした問題と課題は次々とあらわれて住民生活を覆っていく。激動期の記録はもとより重要だが、凪状態期のドキュメントもまた大切ではないか。震災4年目からの被災地はどうなるのか。そんな思いで門脇・南浜・雲雀野地区の撮影を始めました。そしていま、現地は胎動期を迎えています。困難な日常に変わりはありませんが、住民さんの胸中には、あらたなコミュニティづくりの意思があふれています。
2011年5月に初めてキャメラを回してから5年半余、4年目からの被災地を撮り始めて2年半余——地震と津波で失われた地に「まだ見ぬまち」をつくりだそうとする人びとにこれからも同行します。

●青池憲司監督主要作品

《東日本大震災関連作品》
『3月11日を生きて〜石巻・門脇小・人びと・ことば〜』

NEWS石巻かほく：門脇小の震災証言集「3月11日を生きて」、国際会議で上映　18日｜メディア猫の目
『津波のあとの時間割〜石巻・門脇小・1年の記録〜』
《阪神大震災関連作品》
記憶のための連作『野田北部・鷹取の人びと』全14部（日本建築学会文化賞）
『阪神大震災再生の日々を生きる』
《他》
『合戦』（東京都教育映画祭金賞）
『ベンポスタ・子ども共和国』（日本カトリック映画賞）
『琵琶法師山鹿良之』（毎日映画コンクール・記録文化映画賞／文化庁優秀映画作品賞）

●要項

長編ドキュメンタリー映画
撮影地域：石巻市門脇・南浜・雲雀野地区／旧北上川河口部／中央1丁目～2丁目
撮影期間：2014年3月～2017年4月
仕上げ期間：2017年5月～秋頃（編集・音楽やナレーション録音・ほか）
完成予定：2017年秋頃
製作主体：映画集団青池組
公式サイト http://aoikegumi.shinsaihatsu.com/
Facebook　http://www.facebook.com/aoikegumi
スタッフ：青池憲司（監督／プロデューサー）一之瀬正史（撮影）村本勝（編集）
黄永昌（録音）山田武典（撮影／録音）金原雅彦（広報）

●門脇町・南浜町・雲雀野町について

東日本大震災以前の3町の世帯数と人口は1772世帯4423人。津波で356人が亡くなり、142人が行方不明である。南浜町と雲雀野町は居住不可地区となり復興祈念公園の建設が決定している。門脇町2丁目〜5丁目は土地区画整理事業が2014年8月から本格化。事業面積23.7ヘクタールの区域に250戸分の宅地が整備され、復興公営住宅151戸と合せて401世帯、人口1070人のコミュニティが想定されている（2016年5月現在は27世帯70人）。地域の東西を走る南光門脇線（八間道路）は幅37.5ｍ、高さ3.5ｍの高盛土道路になり、その南側が復興祈念公園、北側が新門脇地区である。宅地や道路のほかに小公園と緑地がそれぞれ3か所つくられる。また。災害発生時に避難する日和山など高台への階段と通路を1か所ずつ設ける。